<書評>「おどろきの中国」~YohjiHondaの本の読み方添え~

「おどろきの中国」
橋爪大三郎×大澤真幸×宮台真司
 
本を読んだ。
 
中国に関する本である。いわゆる「中国」についての本をカチッと丸々一冊読んだのは初めてかもしれない。
 
この本を買ったきっかけは「ゆかいな仏教」という本を読んだことである。この本は仏教についての解説本で、珍しく三人の著者が会話している内容を本にしている形式、いわゆる「鼎談」本である。
 
歴史や政治経済、文化や宗教についての本は、総じて読みづらい、読むのが大変なことが多い。それは、興味を深く持つことができないということに加えて、あまりに前知識がなく、出てくる単語が理解できない、またはニュアンスがうまく感じ取れない、からである。
 
この問題に対する解決策は、自分の今のレベルまで読む本のレベルを落とす、というものであろう。例えば「漫画でわかる〜」シリーズに頼るのもよし。もっと基礎知識の、本当に初期の初期レベルまで落とせば、ついていくことができるだろう。
 
ただここで問題となるのは、「そこまで金をかけて(複数の本を購入してまで)勉強するテンションが起きない」ことと、そもそも自分にとってちょうど良い本がどれなのかの判断が難しい、ということである。
 
ちょうど良いかどうかを判断するには、ある程度そのトピックに対して知識が必要である。しかしその知識は最初からあるわけがない。では、めちゃくちゃ簡単なやつから入ろうか、となるが、でも簡単な本はつまらないし、すぐ読み終わっちゃうから、なんか金損した気分になる。
 
そこまでして勉強するテンションがわかない、、、でもわかんないから、、、という繰り返し。地獄のルーティーンである。僕は昔からこのルーティーンを「地獄のルーティーン」と呼んでいる。
(いや、そのままやないかーい!)
 
特に政治や宗教は難しい。本は誰かが何かを伝えたくて書いてあるもので、必ずその「誰か」の主観が含まれる。前知識がない場合は、まずその人の主観を丸呑みにすることから始めなくてはいけない。これは初めに読む人を間違えるとかなり怖い事態となる。特にその知識に関しての最初の一冊は、インパクトが残りやすいし、自分の考え方にある程度影響を与えるものになるからだ。
 
まあ間違ってるかどうか、の判断がそもそも主観であるのだから、実際に間違っているとは言いがたいのかもしれないが、そもそもソースが適当とか、時代にあっていないとか、著者の思い込み、なんてこともありえるのだ。
 
そうなると、いきなり誰かの本を急に買うのは怖いし、かといって初歩の初歩から買って自分で何冊も何冊も読む前提で進めるのも怖いし、、、
 
そうやって、過去3年ほどは、宗教や歴史認識、政治の分野の本があまり読めていない状態が続いていた。
 
しかしここにきて、たまたま本屋で手に取った本によって、自分にとって素晴らしい解決策が生まれた。それはズバリ「鼎談」である。
 
「鼎談」
[名](スル)三人が向かい合って話をすること。また、その話。「三国の首脳が鼎談する」~大辞林~
 
いわゆる鼎談本とは三人が話し合っている内容をそのまま本にしているもののことを言う(多分)
 
この「三人」というのがポイントで、二人が意見を戦わせるのではなく、「問いに対しては三つ以上の多様な答えがあるのが大前提」で話が進むのがとても良い。
 
つまり、一人ではその人の意見を鵜呑みにするしかなく、二人だと「どちらかが正しい」という考えになってしまうが、三人だと「なるほどそういう考えがあるのね〜」というように、物事を非常に客観的に理解することができるのが鼎談の素晴らしい点である。
 
本音を言うと、僕はそもそも対談本やら鼎談本やらが苦手である。意見が多数出る分、読むのに頭を使うし、読んでて今の発言は誰のだっけ?ってなることが多々あるからだ。(絶望的な短期記憶)
 
しかし、この「今まで読んだことがない、前知識が一切ない状態での最初の一冊」に関しては、鼎談本は非常にオススメである。
 
先ほど提示した「鵜呑みにするしかない」「間違えたくない」「でも初歩はつまんない」という三大問題点を、鼎談本はことごとくクリアしているのである。
 
説明するまでもないと思うが、鼎談は三人であるから「多様な意見に最初から触れることができる」し、三つの意見から自分の考えに近いものを選んで学んでいけばいいし、鼎談するぐらいであるから、著者はそのジャンルに詳しい人たちであろうし、初歩の説明から応用の説明まで丁寧にされていることが多い(ここら辺は本によるだろうけど)
 
さらに鼎談するような人たちっていうのは、リソースもしっかりした情報のことが多いし、三種三様であるので(当然そういうキャスティングのはずだし)本当にいろんな角度からの意見に触れることができる。
 
だからまずは興味あるジャンルの鼎談本をチョイスし、とにかく一冊読みきってみるのが「勉強をスタートする時の最初の一冊」としては、非常に優れた選択肢となるのではないだろうか。
 
この「とにかく一冊読みきってみる」というのがポイントで、以前読んだ「ゆかいな仏教」については特に顕著だったのであるが、はっきり言って最初から何言ってるのか全然わからない。
 
そもそも仏教の基本理念を知らないし、大乗と小乗の違いも知らないし、仏教と儒教と神道の違いもよくわからん。
 
でもそんな状況でも、とりあえず一冊読んでみる。そうすると、だいたい一冊も読めば、ふんわりとした知識がとりあえず手に入る。その時点ではただのふんわり知識である、おそらく一週間もすれば全部忘れてしまうだろう。
 
だから次の一手が一番大切なのだが、これはもう本当に簡単で、「本の中におそらく出てきたであろう参考文献の中から、一番面白そうなものを読む」である。
 
これが一番良い。もちろん参考文献ではなくても、とりあえず同じジャンルの本を読む、でも全然いい。
 
そうすると、なんとなーく読めるはずだ。少なくともあなたは一週間前に同じジャンルの本を一冊読んだばかり。覚えている単語もあるだろう、見たことのある単語が並ぶだろう。
 
そうすれば次の一冊を読むのはそこまで苦労しないはずだ、そしてさらに次の一冊はいうまでもない。
 
そうやって知識を増やしていくのが一番良い方法であると思う。今回鼎談本を読んでいて、そう思った。特に今回読んだ本は中国に関する本であり、知らないことだらけ。習近平って文字は見たことあるけど、何した人でどういう歴史背景があって、、、みたいな話は全くゼロ知識スタート。
 
だからこそ、とりあえず鼎談本で多様な話に触れれたのは非常に良かったなと思う。何より中国に非常に興味が湧いた。この国の歴史や経済の動き、国民の意識や宗教、政治。もっといろんなことを勉強したいなと非常に感じ入った次第である。
 
さて、ひょんなことから本の読み方を熱弁してしまったが、あくまで書評である。これから書評を書く、ここからが本番である。
 
「おどろきの中国」
橋爪大三郎×大澤真幸×宮台真司
 

 

おどろきの中国 (講談社現代新書)

おどろきの中国 (講談社現代新書)

 

 

 
三人の社会学者が中国の文化や宗教観、国民性、今後の中国との国際関係について語った本である。内容としては橋爪さんが中国のエキスパート、他二人が知識を踏まえながら疑問を提示していき、橋爪さんが答えるという形式で展開している。
 
特に勉強になるのは前半の中国の宗教観についての議論である。宗教観というと、中国でいう宗教は儒教なのであるが、日本とはやはり「宗教」というものに対する感覚が違うのだなという印象を受けた。
 
そもそもおそらく「宗教観」という言葉すら、中国にはないのではないだろうか。儒教はあって当たり前のものであり、常識であり共通理念であり、社会通念なのだ。
 
その儒教がどうやって中国に浸透したのか、そもそも時の権力者はなぜ儒教を選択したのか、といったような「そもそも論的な部分」も非常に興味深い。「宗教とは、あくまで人間が人間を支配するためのツールなのだ」という当たり前の見識を、まざまざと再認識させられた。(もちろん宗教の存在意義はそれだけじゃないけどね)
 
そして後半は、日中関係、今後中国とうまく付き合っていくには、日本は中国のどういった部分を理解し、どのように振舞っていくべきなのか、という内容が論じられている。
 
そして国際関係の中の中国、に注目し、アメリカを中心とするキリスト経済圏と中国、北朝鮮との関係性、台湾問題についてなど、非常に幅広い内容を、まさに初心者のために噛み砕いて、エッセンスを軽く触れていくという、理想的な「中国理解の入門書」となっていると思う。
 
正直最初は中々読むのが大変だった。なんやかんやで
歴史も全然ちゃんと理解していないし、そもそも個人的にも御多分に洩れず、中国に対して良い印象は持っていないし。
 
しかし後半以降は内容もより頭に入りやすくなって、中国のことをもっともっと知りたいと思えた。初心者用としても最初は中々のハードルかもしれないが、中国に興味のある人はぜひ読んでみてほしい(そんな人稀か?)
 
とにかくわかんない単語が出てきても飛ばせ!目的は読了である。そのつもりでとにかくページを推し進めるのだ!
 
現場からは以上です。
 
知識厨へのオススメ度 ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
読みにくさ ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
好きレベル ⭐︎⭐︎⭐︎
かかった時間 4~5時間